東京の埋め立て地で子どもを育てた父親と、
東京の埋め立て地で育った息子が
畑で肩を並べて作業している2015年の春。
 
息子は高校の進路から親のアドバイスを
何一つ受け入れず、すべて勝手に決めてきた。
特に意味もなく東京から関西へ行き、
行き着く先はNPOで働くわ農村に興味あるわ
と意味の分からないことばかり。
 
父親はリーマンショックなどを受けて
色々あり数年前に大企業を早期退職。
趣味らしい趣味もなかったはずだが、
いきなり農業大学に通い始めるわ
絵画を始めるわ東京観光の案内人を
始めるわと意味の分からないことばかり。
 
農村の畑付きの家を借りた息子だが、
適当にやってるだけの状態に父親が奮起した。
今年の3月からわざわざ東京から
神戸に日帰りでやってきて、
東京の農大で習ったことを
関西の古民家に住む息子に教え始めるという
摩訶不思議な状態が始まった。
 
父親とこの歳になって新しい関わりを
取れるのもすごくいいこと。
 
畑で一緒に土を耕しながら
「10年前にこんなこと想像できなかったな。」
と父親がぽろっと言った。
 
うん、予想できないから人生はおもしろい。
nouti