社会人として働き始めて、毎日会社に通うという当たり前がとても大変であることや、土日に何をして過ごせばいいのかよく分からない(=お金を浪費して結局むなしさしか感じない)という色んな悩みがありました。また、仕事で出会う人々から学ぶことや、宮城のおいしい食など、これまで頭の片隅にもなかったことを知り考えることも増えました。

そんなある日、本屋で並んでいる本の中で、完全にジャケ買いした本がありました。
 
がちんこ農業生活 会社勤めよりは楽しいか? (P-Vine BOOks)
そがしんいち
スペースシャワーネットワーク
2008-08-02


農業という分野への関心も芽生えつつありましたが、それより副題の「会社勤めよりは楽しいか?」というフレーズに惹かれました。よく怪しい本で「サラリーマンより投資家になって大儲け」系のものがありそっちには全く興味がなかったのですが、農家と会社勤めという対比がおもしろそうで買いました。

これまで色んな本を読んできましたが、「これまでに最も影響を受けた本はなんですか?」と聞かれれば、現時点ではおそらくこの本を選ぶだろうと思います。

まず、農業や個人事業というものの格好良さを知りました。

俺が大学生のとき、「百姓」って言葉の語源は、百の仕事をこなせないといけない職業と聞かされました。そして、だからこそ誇りを持って農業をしようと。
P137
あと、よく言われることなんだろうけど、「なんでも自分でやる仕事」みたいな、そこらへんがあります。もっとカッコよく書いてみると、「頭・体力・直感使って自分の采配で結果を出して自分で責任を取るガチンコ感」に面白みを感じたって感じだろうか。基本的にあれしろこれしろって言われるのが嫌で、誰かにへつらって生きるのもまっぴらゴメンで、言ってしまえば社会不適応者に近めな人かもしれないんですけど、まあ、ポジティブに捉えて、だったら全部自分でやりゃーいいじゃん?と。
P54
俺は無闇に今の便利さを批判して昔に戻れ的な議論にはくみしません。ただ、世界には忘れ去られることが多くなっているという事実があるだけ。一人間としてその便利さを享受しながら、見たくない事実から目を背けている自分がムカツクだけです。だから俺はそれについての表現をしたいし、やめない。できれば俺に、なんかできないかって思いますよ。
P216

その当時は仕事についていくのに必死で先の目標などほとんどなかったけれど、いつか自分で采配をふるような仕事で、それも農業みたいに生活に密接に関わるものだったらおもしろそうだなぁと考え始めるようになりました。うっすらですが、初めて将来のワクワクするイメージが(ただの妄想的に)見えた瞬間でした。

『28歳で新規就農!新進気鋭の若手農家、鶴巻さん。』

「お金貯めておいて40代とかで脱サラかなー。ああでもやっぱ記事映えするなら(何の記事?)20代の内に始めるのがかっこいいよなー。」
などと相当薄っぺらいことを妄想し始めました。

そしてこれまでは、会社に迷惑かけないようにしなければいけないし、会社員として結果を出して、その結果の先に会社が大きくなればよい(できれば出世して給料もUP!!)という目線で考えていましたが、個人事業主という観点から強烈に書きつづられていました。

今はもう昔じゃなくて、どんどん自分で動いて自分で方向づけしていかないといけない。もう誰かに依存はしてらんないでしょ?カッッコいいフレーズをパクると「豚の安心を買うより、狼の不安を背負う」みたいな、そんな感じ?
P124
今はさ、早めにリタイアして悠々自適の生活を考える人も多いけど、俺はその逆で一生リタイアしたくねーって思ってます。生涯現役ってやつ?なんかリタイアしたら何が幸せなのかよくわかんなくなるような気がするのは俺だけ?まあ、そういうのは人それぞれですから別にいいんですけど。
P126

何を正解とし、何を選択するかは本人次第だけれど、それぞれの立場から見るとそれだけの見え方があるのだなとその時改めて感じました。

そしてなんとなく感じていた休日のむなしさについても、ああそういうことかもなと妙に納得しました。

ただ俺的に、快適さだけを追求していった先にある「退屈感」はもっとしんどい気がします。一人で都会に暮らすのは快適だったんだけど、なんか本質的な退屈感は持っていました。そういうごっちゃな生活に少し価値を見い出せたのは農業をやっているからだと思います。
P226 
俺はまだ「退屈感」を背負っています。原因はよくわかんない。でも、この矛盾を抱えた生活の中で、前よりそういうのはなくなりましたよ。どうしようもない虚無感におそわれることがなくなったんです。今俺の中で大きいのは「今をどうやってかぶくか?」。俺にとって今がとても大事で、その今の積み重ねが結果的に夢の実現につながれば良いなって思ってますよ。生活に精一杯で退屈感を持つ暇がないってのも現状ですけどね。
P227

この本を読んだ後、自分で何か動かないとだめだなーと痛感し、とりあえずベランダで野菜を育てるためにホームセンターに足を運んだのでした(どこまでも短絡的)。

(無駄につづく)