去年の10月、初めて茅葺きの現場に行くときに、親方の相良さんに持ち物の確認をした。

「地下足袋と、動きやすい服装があればいいよ。」

との返信。

地下足袋・・・。履いたことがない・・・。
足袋というと真っ白なやつのイメージがあるが、あれを履いて現場で働いているのだろうか。何か変なモノを買って現場で笑われたら恥ずかしい。

というわけで、相良さんのFacebookの写真をマニアのように確認する。
1
あった!これだ!黒だ!

早速ホームセンターに買いに行く。
tabi
うーん、地下足袋は箱に入って売っているのか。
 
そして箱に書いてある謎の単位。

「12枚 27.5」

12枚?
この箱に12足も入っているのか?結構入ってるな。
薄いのか?冬寒くないか?
そもそも地下足袋ってそんなに頻繁にだめになってしまうものなのか?

正解が何もかも分からない買い物を進めるというのは中々困難である。

箱を空けてみると1足しか入ってなかったので、サイズだけ確認してとりあえず黒であることだけを信じて購入完了。


 

地下足袋は、こんな感じになっている。

setsumei
(出展:http://uni-work.co.jp/web/g/jika/index.html)

枚とは、足首を止めていく「コハゼ」という金具の数を指すのであった。

さて、この地下足袋という代物である。
履くのが難しい。
そして面倒くさい。
1回履くために12回も金具をひっかける作業を行うとは、この世の沙汰とは思えない非合理的すぎる履き物である。

しかし、この足とのフィット感は感じたことのない心地よさである。
もはや何かを履いているという感覚はない。
裸足のまま歩き回っているのと同意の感覚である。
こんなすごい履き物が存在していたなんて。

世界中の靴メーカーがこれまで研究に研究を重ね早く走れる靴を開発してきたと思うが、地下足袋に勝るスペックの靴は開発されているのだろうか。
巨人の鈴木尚広も地下足袋で盗塁した方がいい。

とりあえず自分の子どもが瞬足を欲しいと言ってきたら、地下足袋に「瞬足袋」と縫いつけて与えようと思う。

そんな風に思ってしまうのが地下足袋である。


そして、茅葺きのような屋根仕事以外でもあらゆる作業で使える地下足袋。
しかしそう思っていても家の畑作業などでは履かない。
なぜなら履くのが面倒くさすぎるからだ。
家で水分補給した後にまた12回金具を引っかける作業を行うのはあり得ないほど面倒くさいからだ。 

そんな風にも思ってしまうのが地下足袋である。

地下足袋とは奥深い履き物である。
みなさんも人生で1度は地下足袋を履いて草原を駆け回ってほしいと思う。