今日、来週の稲刈りイベントのため田んぼ周りの草を刈っていると、淡河町の中でも特にうまい米を作る某農家の方が通りすがりにやってきた。

「刃のチップがほとんどなくなってるやないか。」

化粧もそこそこで外に出て、知ってる人に出会ってしまいちょっと気まずい貴婦人状態。
いや、普段はね・・・ちゃんと定期的に刃替えてますけどね・・・今日は時間がなくてですね・・・。

この農村の人々の刈払機への熱い情熱はなんなのだろうか。
image
自分の刈払機(奥さんの実家から譲り受けた)を見るなり、
「馬力弱いやつやな。」
という瞬時の断定。目利き力半端ない。 
 
そこから上記チップの突っ込みが入り、刃のレクチャーが始まる。
安物の刃をかなり短いスパンでバンバン替えるか、2,000円くらいの刃を買ってある程度長く使うかのどちらが経済的かつ身体にも負担がかからないのか。
師の日々の実践とそこから導かれる哲学が胸に響く。
 
刃の話のあとは、刈払機本体の話に移り、師のマシーンは4サイクル(このサイクルという意味をよく知らない)であるから燃費もいいらしい。この燃料で3時間も稼働するとは!俺の刈払機の3倍燃費いいじゃないか!
そしてストラップ(肩掛け)、二刀流(師は2台常備しているらしい)など熱い話はしばらく続いた・・・。
そして師はなぜか自分の田んぼ周りを半分も刈ってくれ、颯爽と帰っていった・・・。 

そういえば茅葺き職人の某親方も刈払機には熱すぎる想いを持っている。
「やっぱメーカーはゼノアがええよ。」
「やっぱプロはループハンドルやな。」
「やっぱ刃はブルーシャークがええよ。」
「この間『オニ斬り』っていう5,000円もする刃があってな・・・。」
「刃はな、この角度で草に当てんねん。」
「動きが悪くなったら、ここを開けて見てみれば・・・ほら詰まってるやろ。」
とその圧倒的な情報量と探求心は留まることを知らない。
そして余談だが、農村に関わるアイテムの名前って真面目なのかふざけているのかよく分からないものが多い。
ブルーシャークて・・・。
オニ斬りて・・・。
 
そして一番響いたのが
「ストラップはジミヘンやから。」
というものであった。

そうか、農村の男たちは皆刈払機を振り回すギタリストだったんだ。
なんて浪漫のある素敵な話なんだ。

あそこにはチャック・ベリー、あっちにはエリック・クラプトン、あの山を越えれば忌野清志郎。
みんな草を刈りながらライブハウスでギターを奏でているのだ。

淡河のジミヘンはジミヘンだけあって、刈払機(ギター?)も高いらしい。

ああ、そういえば某アートディレクターにも、ブログでいい刈払機が欲しいと書いた時に、
「あのブログにリンク貼ってたやつは充電式やから、村の清掃で持っていったときに充電切れたらその後使えないしやっぱ燃料式の方がええよ。」
という極めて具体的なアドバイスを頂戴することとなった。

(いや、あればamazonの検索で上位に出てきたやつ適当に貼っただけやん・・・。『刈払機』というあくまでのイメージ画像やん・・・。めちゃくちゃ細かく調べてるやん・・・。)

と心の中で思った。刈払機への想いが奴も熱すぎる。

こういう環境で5年過ごすと、自動的に自分もそうなっていくのだろう。
そして支出を減らすことを目標に農村暮らしをしているはずだが、何気に農村には『グレードの高い○○がええ。』という相互扶助的に購買意欲を無尽蔵に高め合う危険なシステムが存在しており、購買意欲が常に刺激されていると最近気付くのであった。