振り返ってシリーズその2。
去年退職し、新しく仕事をしていく中で、こうなったらいいなという狙いが「仕事を複業化する」ということであった。元々農村であれば農業のように時期によってできる仕事できない仕事があるし、人不足ではあるが週40時間雇える余裕がないみたいな場所があるのではないかと思っていて、細かい仕事をたくさん作ったりいただくことで生活を成立させることができるのではないかと思っていた。結果的に複業化することに成功したわけだが、色んな面から『複業』というやり方について書いてみる。

1 職のリスク管理として
0か1かという状況ではないので、これについてはやはり合理的だと思う。仮に来年の3月に行政からの委託である移住促進の仕事がなくなっても、他の仕事の日数を増やすなり自分で仕事を作る時間なりに当てられるので、一気にすべてを失うかもという不安はない。もしかしたら空いたその隙間でまた新しい仕事ができるかもと考えればそれはそれでワクワクする話でもある。

2 仕事を与える立場として
こういう中途半端な勤務時間でいい人間を使えるのは法人や団体にとっても使い勝手がいいのではないだろうか。移住促進事業は元々それだけでは到底食べていけない額であるし、インターンもNPOの立ち上げとしてフルタイムの職員をというよりは、週2~3日の業務委託で進めていきたいという希望であった。雇用を守るという観点も大切だが、むしろもっと状況に応じてくっついたり離れたりしやすい働き方も必要ではないだろうか。法人としては流動的に人を管理できた方が余計なコストをかけずに済むし、労働者としても自分に全然合わなかった職場にしがみつかなくてもさっさと辞めて次を探せるような世界の方がいいのではないかと思う。

3 自分の性格的に
これは複業という形は非常に向いていると思う。元々興味の移り変わりが激しく色んなことを広く浅く知りたいという性分なので、毎日、毎週、毎年同じような内容の仕事をするというのはあまり向いていない。世の中には、1つの分野を突き詰めたり極めたりするのが上手な人と、毎日違うことをさせた方が切り替えができて力を発揮する人がいるはずで、もっともっと毎日違う環境で仕事するような働き方があっていいと思う。今はデスクワークと現場仕事が入り乱れて働いているが、バランス的には非常にありがたく、こうやって切り替えながら毎日過ごせるのは色んなことを引きずることがないのでいつも新鮮な気持ちで仕事に向かうことができる(たぶん志の高い人はどんな働き方であれ毎日新鮮さを持って臨めるはずだと思うけれど・・・)。

4 所得を高めるという点において
これは素直に厳しい。やはり自分の人生を1つの分野に集中させ高めている人に対して週2日とか3日という中途半端な時間で挑んでいるわけなので、専門性を高め所得を増やすという観点では真逆のことをしている状態である。また組織や法人に忠誠を誓っているわけではないので、自動的に毎年給与が上がっていくような仕組みももちろんない。所得を増やすポイントとして複業(仕事)の数を増やすという力技もあるが、働く時間が増えてしまえば何の意味もないので限界はある。職を一気に失うというリスクを下げたことと引き換えに、専門性を高め所得を増やすというリターンも下がったという状態である。

5 一人間として
人間の営みとして、昔はもっと色んなことをしながら自分たちの生活スキルを高めていったのではないだろうか。以前茅葺き屋根の材料であるススキを引き取りにある老夫婦の家に行った際に、おじいさんはかつて茅葺きのテッタイや、左官、大工などもやっていたとのこと。春から秋は農業をし、冬は杜氏としてお酒を造るなど、複業してお金を稼ぐことは当たり前だったのではないだろうか。職人として技能を高めることが得意な人と、複業して手伝うことが得意な人が色んな場所でタッグを組んで活躍する。そしてそうやって色んな分野に(ある程度)精通していくことで、身の回りの生活スキルを高めていったのではないのだろうか。ある分野の中でもさらに分業分業で細かく切り分けられたことばかりしていると、会社にとっては都合がいいかもしれないが一人間としての可能性を考えた時に残念だと思う。もっともっと個々人が新しい発見や広がりがある生き方や働き方ができればいいのではないかと思っていて、(人によっては)かつての複業というやり方を取り戻すことがその一助になるのかもしれないと思い、『複業』という方法を現代版に合わせていきながらこれからも続けていきたいと思う。
定住仕事②