これまでは芋掘りの観光農園として幼稚園や保育園の受け入れや、個人のお客さんやイベントで芋掘り体験を行っていたが、今年度はサツマイモ自体も加工するなりして販売してみたいと思っていた。
しかし加工用に育てていた芋がほとんどイノシシにやられてしまい、芋掘り受け入れ用のサツマイモの余りを転用しようとしてみたがうまくいかず、年末を迎えても使い道を見出せぬまま投資してしまった加温庫に大事に保管されていた(サツマイモは寒くなると腐ってしまうので、ある程度の温度が必要。そして寝かせば寝かすほど甘くなっていく)。
そんな折、同じ町内の農家である森本さんや、EAT LOCAL KOBEの小泉さんから
「焼き芋やったら?」
と声をかけてもらい、三宮の東遊園地で行われている冬のマーケットに参加させてもらうことになった。
これまで干し芋の研究を一心不乱にしてきたが、この瞬間から少しでも甘くなる焼き芋の方法を調べて試してを繰り返したのであった。
マーケットに出したイモは2種(と米)。ドラマを感じていただきたい。
●安納芋
ねっとり芋の代表格。スイーツのように甘い。
イベントで焼き芋をするときに間違いのない品種。
中々大きく作るのが難しく、マーケットでも小さいサイズになってしまい、そのあたりの難しさはあった。(ただどんなサイズでも規格外としないで販売できることはとてもありがたいことだと実感した)
「少し食べれればいいから小さいサイズでちょうどいい。」
という声もあったり、色んなニーズがあるんだなと思った。
そもそもの安納芋というブランドの引きが強く、毎回すぐ売り切れた。
そもそもの安納芋というブランドの引きが強く、毎回すぐ売り切れた。
●紅あずま
紅あずまは、昔ながらのホクホク系のイモで、天ぷらなどでおなじみの品種。
妻の実家の芋掘りの受け入れはずっと紅あずまだったので、そのまま継続で紅あずまを作っていた。
干し芋用のイモがすぐなくなってしまったので、替わりに紅あずまで加工してみたが、ホクホク系は干し芋に向かないらしく、見学に行った茨城県の農家にも、
「紅あずまでは無理!!」
と一刀両断されてしまった。
天邪鬼なので何とかならぬものかと年末まで毎週実験を繰り返したが何ともならず、罪のない紅あずまを恨んだりした(自分勝手すぎ)。
その後年が明けマーケットで焼き芋をすることになり、紅あずまを活用できるチャンスが与えられた。
しかし、上記安納芋や、最近の王者『紅はるか』『シルクスイート』等の登場によって、昨今の焼き芋は「スイーツ並みに甘いもの」という認識になってしまっていた。
紅あずまは、そんなに特別甘いイモではない。
『昔ながらの』という枕詞が通用する世代以降であればイメージがわくと思う。
また紅あずまは、焼き芋がイマイチ苦手な人(実は自分も子どもの頃食べたイメージでその部類であった)の「ホクホク≠パサパサ、もさもさ」という特徴も兼ね備えている。
安納芋と紅あずまを同時に焼き上げると、その甘さの違いに驚く。
先に安納を食べてはいけない。
「やっぱり中々受け入れられないかなー。」
と不安たっぷりでマーケットに出てみたが、
「この焼き芋が食べたかったのよ!最近のは甘すぎ!」
「やっぱりホクホクが好きでね。」
というポジティブなお声をたくさんいただいた。
出店する度に買いに来てくれる方もいたり、その場で子どもがペロッと食べて持ち帰りで買ってくれたりと、勇気づけられることが多かったし、人の味覚や好みは単純なものではないと勉強させられた。
一方で、手厳しい意見ももらったりもして、焼きすぎや、大きさ(大きさはだんだん見慣れてくると判断がおかしくなってくるので、重さにすれば公平だったかなと思った)はまた次年度以降改善していきたいと思った。
※そもそも、料理の場合は完成品を味見してから出せるが、イモは1つ1つが別々なので、
「すべてのイモの中心部をスプーンですくって固さや味を確認したい。」
という衝動に駆られた。
そして自分自身も、次第に紅あずまの境遇に完全に感情移入してしまった。
生産量も最盛期の半分まで落ち込んだりして、時代の波に飲み込まれている紅あずま。
なんだかフライボール革命に代表されるパワー勝負に飲み込まれたイチローのようではないか。
だんだん愛しくなってくる。
そして毎週毎週焼いては味見をしてを繰り返していくと、紅あずまのやさしい甘さがだんだんクセになってきて、
「実は紅あずまはめちゃくちゃうまいんじゃないか。」
「結婚するならやはり紅あずまタイプの女性ではないか。」
という気持ちになり、紅あずまに恋い焦がれていった。
冬しか出すものがない農家なので、また裏六甲でイモと米作りに勤しみます。





